ヒポクラテスのてぃかi

思考ダダ漏れ

食道・胃静脈瘤

【病態】
肝硬変などが原因で、門脈圧亢進(>200mmH₂O)により門脈系と体循環系の間に側副路が形成され、食道や胃粘膜下層の静脈が拡張・怒張した状態。食道下部に好発し、食道胃静脈瘤自体の自覚症状は乏しいが破裂によって大量出血をきたすと致命的となる。
【分類】
部位別 L:location
Lm(中部食道静脈瘤)
Li(下部食道静脈瘤)
Lg-c(胃噴門部静脈瘤)
Lg-f(胃穹隆部静脈瘤)


形態 F:form


静脈流の形態自体は出血との関連性は低い
F1直線的で細い静脈瘤(できたばかり)
F2 連珠様(拡張蛇行して)
F3 結節様(さらに成長し、食道内腔に大きく突出)
色調 C:color 最大径の静脈瘤の示す色調 Cw 白色静脈瘤(正常の食道粘膜の色調と同じ)
Cb 青色静脈瘤(さらに静脈瘤が成長し粘膜が緊満してくる)


発赤所見 RC:red color sign
さらに熟すと引き伸ばされた粘膜が菲薄下し赤みを帯びる。出血と密接に関係しており最も重要な所見。


RWM:red wale markingミミズ腫れ 
CRS:cherry red spot チェリーレッドスポット
HCS:hematocystic spot 血マメ


RC0 発赤所見を全く認めない
RC1 限局性に少数認める
RC2 RC1とRC3の中間
RC3 全周性に認めるもの



治療適応
1:出血所見を認める静脈瘤
2:出血既往がある静脈瘤
3:F2以上の静脈瘤またはF因子に関係なくred color sign陽性(RC2以上)の静脈瘤


≪急性出血時≫
1:まず、vital signをチェックしショック状態か否かを確認する。
ショック状態ならば直ちに輸液などショックに対する治療を開始する。
2:緊急内視鏡検査を行い出血部位を確認する。確認できない場合はSBチューブにより圧迫止血。
3:出血部位か確認できたら内視鏡的静脈結紮術(EVL)を第一選択とし、時に内視鏡的硬化術を行う。これらの手技で止血が困難な場合は、SBチューブを用いて圧迫止血を試みる。


≪待機例、予防例≫
・内視鏡的硬化療法(EIS) 
内視鏡下で静脈瘤に対し硬化剤(オレイン酸モノエタノールアミン)を注入し静脈瘤を硬化させる。これに加えてエトキシスクレロールという硬化剤を静脈瘤の周囲に注入し潰瘍を形成させ、瘢痕化させる。この瘢痕化によって周囲の血管も線維化させ血流を阻止し再発予防が期待できる。
・内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)
急性出血時の第一選択となる。高度に肝機能が低下した症例や全身状態が悪くEISが施行できない場合にもEVLが施行される。
内視鏡下に静脈瘤をゴムバンド(O ring)で結紮し静脈瘤を消失させる方法。侵襲性はほとんどないがEISと比較して再発率が高い。



・経皮経肝静脈瘤塞栓術(PTO)
侵襲性がそれなりにあるためEISやEVLに抵抗して再発する静脈瘤に対して施行する。
腹部エコーのガイド下に門脈を穿刺し、そこからカテーテルを挿入する。ここで静脈瘤に通じる血行路(供血路)を把握した後、その供血路に対してコイルや100%エタノールなどの塞栓物質を注入し、静脈瘤に対する血流を阻止する。


・経皮的肝内門脈静脈シャント術(TIPS)
EISやEVLに抵抗して再発する静脈瘤に対して適応となる。
門脈と下大静脈にシャントを形成することにより門脈圧は確実に低下するが、肝機能障害の悪化(肝臓に入る血流が減少することによる)、肝性脳症の頻発(肝臓での解毒を受けずに下大静脈に流れる血流が増加するため)が問題となる。
経皮的に内頸静脈を穿刺し、カテーテルを挿入し肝静脈起始部(内頸静脈→下大静脈→
肝静脈)に進める。ここでカテーテルにかぶせた針を用いて門脈を穿刺する。(右肝静脈→肝実質→右門脈枝)これによってできたシャントに金属製のステントを留置し門脈から肝静脈へのシャントによって門脈圧を下げ、結果的に静脈瘤は縮小する。
・バルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)
主に胃穹窿部静脈瘤に対して開発された治療法で多くの施設でEISを優先しこれに抵抗するケースに対してB-RTOを施行する。経皮的に大腿静脈または、内頸静脈を穿刺し、静脈の流れに逆行してカテーテルを胃穹窿部静脈瘤の流出路(多くは胃腎短絡路)に挿入する。ここでバルーンを膨らませ血流を遮断した後、硬化剤(5%EOなど)を注入し静脈を閉塞させることで静脈瘤を縮小させる。




【消化管出血で特徴的な血液所見】
BUN/Cre比の上昇:消化管出血により腸管内で分解された赤血球からアンモニア産生が高まることによる
K上昇:消化管へ出た赤血球が崩壊し、Kが放出されさらにこれを吸収するため高K血症となる。